優勝から遠ざかる「陸の王者」をどう立て直すのか 　大学球界を仰天させたといっても過言ではなかったのが江藤省三元巨人、横浜、ロッテコーチの慶応大野球部監督就任だ。プロ野球出身者が大学野球部で指導するのは珍しくなくなってはいたが、東京六大学で、しかも長い伝統を持つ慶大でなぜ、というのが野球ファンの正直な感想だろう。その江藤新監督を直撃した。 ――監督就任のいきさつを教えてください。 「ある日突然、野球部から監督をやってくれといわれたのです」 ――そのときはどう思いましたか？ 「まさか自分が監督をやるとは思わなかったのでびっくりしました。でも大学側は慶応大学で最初のプロ出身監督でよかったと話してました」 ――プロの経験を生かして野球部を優勝させて欲しいということでしょうか。 「この４年間、ＯＢとして技術指導員を務め、週に何回か教えに来ていた。その延長線でチームの再建、立て直しをということで監督になったのでしょう」 ――江藤さんは巨人やロッテでコーチを務め、ロッテでは監督代行もやっています。それに比べ慶大監督はどうですか。 「プロ野球のコーチは担当部門がある。そこをしっかりとやればいいし、監督もいる。監督代行といってもやはり監督がいる。今回は監督という責任を取る立場だし、東京六大学、母校初のプロ野球出身ということで反響も大きかった。就任会見で『１年くらいで頂点を目指す』と言ったら、すぐＯＢから『よく言った』と反応が返ってくる。塾長や理事の方に会うたびにプレッシャーが大きくなりますよ」 ――大学生を指導していて一番感じることはどういうことですか？ 「昔と違ってオレについて来い、黙って言うことを聞け、ではダメ。選手を納得させ、納得して練習することが大事。中途半端な指導では選手に切り返されてしまう」 ――練習で力を入れているのはどういう点ですか？ 「就任前日のミーティングで『練習した人が勝つ』と話した。今は打ち込み、走り込み、投げ込みに力を入れている。選手にはムチャクチャやってみようと言ってある。例えば野手はフリー打撃を行わず、素振り、ティー打撃、ロングティーだけをやっている。選手の方から練習の前日に１０００本スイングをやりたいと言ってきた。２時間くらいはかかるが、うれしかった。選手はみんな素直。プロ野球ではやれと言ってもいうことを聞かないのがいたが（笑い）」 ――早大や明大は野球部枠やスポーツ推薦などで、甲子園に出場したような高校球児を取っていますが……。

「今の慶応の野球部員で甲子園出場でベスト４に行ったのは２人だけでしょう。基本的には野球で選手を取ることはしていない。ＡＯ入試といって論文で入学する制度があるが、それで野球部に入ったのはいません」 ――慶応高校出身が多いですね。 「はい。それと他の大学と違って１浪、２浪の選手が多い。（４年生を除く）１２０人中３０人がそうです。そういう中にもいい選手がいるので、何とか引っ張り上げていきたい。また今まで補欠だった選手にもチャンスを与えたい。補欠が１日１０００スイングすれば、２００スイングのレギュラーに追いつくと」 ――平成１６年秋以来、優勝から遠ざかっていますが……。